医療関係者の皆さまへ

精製ツベルクリンの使用方法に関するQ&A

ツベルクリンの包装単位を教えてください。

規格 本数
1μg 1本
1人用 2本

一般診断用精製ツベルクリンには規格が2種類ありますが、その違いは何ですか。

一般診断用精製ツベルクリンには、1人用(2本包装)と1μg(1本包装)の2種類があります。ツベルクリンは溶解後は力価が急速に低下するため保存することができません。1人用の製剤は被検者ごとに、使用直前に溶解して使用します。1μg製剤は、複数の被検者に対して、同時に注射するときに使用します。

一般診断用精製ツベルクリン(1μg・2 mL)は、1本で何人に使用できますか。

およそ7~10人に使用できます。2 mL の溶解液でツベルクリンを溶解し、1人に対して0.1 mLを皮内注射します。ツベルクリン溶液(2 mL)に対して、注射量が0.1 mLですので、20人に使用できるように見えますが、実際には被検者1人ずつ、注射器を変えますし、目盛り合わせをする際にロスが生じますので、実際に使用できる人数は少なくなります。なお、溶液のロスの量によって、使用できる人数は7~10人より多くなったり少なくなったりします。

1人用の溶解液が0.5 mLありません。

一般診断用精製ツベルクリン(PPD)1人用の添付溶解液は、全量を吸い上げたときにシリンジに0.5 mL入るように設計されています。目盛り合わせをした際には、針と筒先にある溶解液の量の分が少なく見えます。
詳細は一般診断用精製ツベルクリン(PPD)1人用のリーフレットをご参照ください。

一般診断用精製ツベルクリンの1人用(1本包装)はありますか。

1人用製剤の1本包装の製品はございません。

ツベルクリンの注射のやり方を教えてください。

ツベルクリン反応検査は、用法用量に従い、添付の溶解液で溶解したツベルクリン溶液0.1 mLを、前膊(前腕)屈側のほぼ中央部または上膊(上腕)屈側の中央からやや下部の皮内に注射します。

ツベルクリンは溶解後、どのくらい保存が可能ですか。

ツベルクリン溶液は、溶解後は保存できませんので、すみやかにご使用ください。

精製ツベルクリンQ&A

「PPD」とは何のことですか?

PPDは、Purified Protein Derivativeの略で「精製タンパク質誘導物」という意味です。昔はPPDではなく旧ツベルクリン(Old Tuberculin、略してOT)が使われていました。OTはヒト型結核菌を無タンパク合成液体培地に6~8週間培養し加熱滅菌した後に濾過して菌体を取り除き、濾過液を濃縮したものを原液として保存しておき、適宜に希釈(通常2000倍)して力価を標準品にそろえて使用していました。 このようにして調製したOTは培地成分、菌の代謝産物、菌の自己融解成分などの雑多な成分を含有しています。この中からツベルクリン反応に必要な成分だけをできるだけ純粋に取り出そうとする努力が続けられ、タンパク質以外の成分をほとんど含まない精製ツベルクリンの製造法が開発されました。このような方法で作られているのが現在のPPDです。精製ツベルクリンのことをPPDと呼んでいます。

ツベルクリンを注射すると、なぜ発赤や硬結ができるのですか。そのメカニズムを教えてください。

結核菌に自然感染したかBCGワクチンを接種された個体では、結核菌あるいはBCG菌に感作されたTリンパ球が全身を循環しています。抗原物質であるツベルクリンが注射されると、そこで感作Tリンパ球と特異的に結合し、その刺激信号によってTリンパ球は種々のサイトカインを産生します。その中には皮膚に反応を起こす因子も含まれ、またマクロファージなども集まることも加わり、注射部位に、発赤・硬結等の反応、いわゆるツベルクリン反応が起こります。 一方、結核菌に感染してなくBCGワクチンも接種いてない個体では、Tリンパ球が感作されていないので、ツベルクリンを注射しても何ら反応は起こりません。つまり陰性という結果になります。

ツベルクリンの禁忌および原則禁忌について教えてください。

ツベルクリンの禁忌は、ツベルクリン反応検査において水ほう、壊死等の非常に強い反応を示したことがある場合です。過去に強い反応を呈した者に、再度ツベルクリン反応検査を行うと、同様の強い反応が出るおそれがあります。その他、ツベルクリン反応検査を行うことが不適当な状態にあると医師が判断した場合も注射はできません。
原則禁忌に該当する、明らかな発熱、重篤な急性疾患、まん延性の皮膚病、副腎皮質ホルモン剤の使用は医師が必要と認めれば、注射できます。ただし、正しい結果が得られないおそれがあり、結果の解釈には注意が必要です。
原則禁忌以外でも麻しんワクチン等の生ワクチン接種後1ヵ月以内、高齢、栄養不良、細胞性免疫異常、悪性腫瘍、重症あるいは急激に進展する時期の結核、ウイルス感染症、膠原病、ホジキン病、血液透析中、サルコイドーシスなどでもツベルクリン反応が弱められます。

ツベルクリンと他の薬剤との相互作用について教えてください。

体に対して悪影響を及ぼすという意味での相互作用はありません。
ツベルクリン反応検査の正確性を確保できないという点での相互作用的なものはあります。次の薬剤の投与中あるいは投与後には、ツベルクリン反応が弱められることが知られています。
免疫抑制剤、副腎皮質ホルモン剤、制癌剤等。
また、麻しんなど生ワクチン接種後1ヵ月程度の間もツベルクリン反応が弱められます。

ツベルクリンの全身的な副反応はありますか?

結核に感染してなく、BCGワクチンの接種も受けていない人に対し、ツベルクリンが全身的な反応を起こすことは知られていません。
結核患者に極めて多量のツベルクリンを注射すると発熱がみられるというような特殊な場合を除き、結核に感染している人、あるいはBCGワクチン接種を受けたことのある人でも、通常のツベルクリン反応検査に使う量のツベルクリン(PPD)では、全身的な副反応を起こすことはありません。ツベルクリンを注射したからといって、結核が悪化、再発、発病などするようなことはありません。

添加物は何が入っていますか?

ツベルクリン製剤には乳糖が入っています。溶解液には、リン酸水素ナトリウム水和物、リン酸二水素カリウム、フェノール及び塩化ナトリウムです。 抗生物質、ゼラチン、チメロサール、アルミニウム、ホルマリンなどは入っていません。

有効期間は何年ですか?

ツベルクリンの有効期間は国家検定合格後3年間です。

ツベルクリン反応検査に用いる注射器はどういったものですか?

ツベルクリン専用のディスポ注射器が市販されております。1 mL用のもので、注射針は26~27Gの皮内針です。

妊婦(妊娠している可能性がある女性を含む)へのツベルクリン反応検査は可能ですか?

特に問題ありません。

ツベルクリンを注射した当日に、お風呂に入ってもいいですか?

差し支えありません。ただし、注射局所を洗ったり、こすったりしないようにしてください。

他のワクチンとの接種間隔は考慮する必要がありますか?

麻しんワクチン等の生ワクチン接種後、1ヵ月以内はツベルクリン反応が弱められますので、その間の使用は避けてください。不活化ワクチンとツベルクリン反応検査は特に相互作用はないとされています。なお、ツベルクリン反応検査が陰性であったときに、BCGワクチンを接種する場合は、BCGワクチンと他の生ワクチン(注射剤)との接種間隔にもご留意ください。

ツベルクリンの二段階試験とは何ですか。

BCGワクチン接種後のツベルクリンアレルギーは時間とともに減弱します。その時にツ反検査を行うと(T1)、これが刺激となってアレルギーは再び強くなります。したがってその後再度ツ反を行うと(T2)、その反応はかなり強くなります(T2>T1)。これはブースター現象(あるいは回復効果)と呼ばれます。医療従事者に採用時にツ反を1回だけ行い(T1)、その後結核患者との接触時に接触者健診でツ反を行うと(T2)、感染を受けていなくても上と同じ原理でT2>T1となり、今回の結核感染によってツベルクリン反応が強くなったのかブースターなのか判断できません。そこで採用時にツ反を2度(T1、T2)行っておき、ブースター現象を起こさせ、個人の最大のツ反の強さをT1、T2の成績から記録しておき、その後の接触者健診ではこれと比較をすることによって解釈することが合理的であると考えられています。このための連続の検査方式を二段階ツ反検査法といいます。なおT1とT2の間は1~3週間とされています。