BCGワクチン接種の実際

BCG接種後の副反応

接種後の副反応

BCG接種の副反応は治りにくい接種部位の潰瘍などの局所の強い反応と、腋窩リンパ節腫脹、皮膚結核様病変がほとんどです。
重大な副反応として、ショック、アナフィラキシー、BCG感染症(髄膜炎、骨炎、骨髄炎、全身播種性BCG感染症)、皮膚結核様病変(狼瘡、腺病性苔癬など)があります。全身播種性BCG感染症はほとんどの場合、免疫不全症との合併例です。近年ではメンデル遺伝型マイコバクテリア易感染症(MSMD)がBCGワクチン接種後の副反応に関係しているとの報告もあり、注意が必要です。
なお、予防接種法施行規則第5条に規定する症状を診断した場合、速やかに独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ予防接種後副反応疑い報告書をもって報告します。
参考:厚生労働省ホームページ 予防接種法に基づく医師等の報告のお願い

BCGワクチンによる副反応の出現時期と頻度

予防接種後副反応報告書 集計報告(平成2541日~平成26331日)で集計されているBCGワクチン接種後の副反応の報告数と発生時期(平成610月~平成253月)をまとめました。
腋窩リンパ節腫脹、皮膚結核様病変とも接種後12ヵ月が最も多くなっています。接種局所の膿瘍は、腋窩リンパ節腫脹、皮膚結核様病変と比較すると報告数は少ないですが、発生が多い時期は同様です。一方で骨炎・骨髄炎は6ヵ月以上が最も多くなっており、接種後、時間が経過して発生する副反応です。

(平成6年10月~25年3月)

file.jpg

厚生労働省 予防接種後副反応報告書 集計報告(平成25年4月1日~平成26年3月31日)より作成

BCG接種後の副反応例(写真提供 公益財団法人結核予防会)

紹介した症例は臨床症例の一部を紹介したもので、全ての症例が同様な結果を示すわけではありません。

遷延する局所の潰瘍性変化
画像7.jpg

接種後6ヵ月経過しても治癒しない反応。
時にはいったん瘢痕化した後再び潰瘍化することもあります。
抗生剤の内服や軟膏で治癒します。

 

ケロイド形成〈再接種の事例〉
画像8.jpg

ケロイドは肩峰に近い部位に接種すると起こりやすくなります。
大部分が再接種によって起こり、接種後12年以上経ってから盛り上がってくることもあります。

 

腋窩リンパ節腫大
画像9.jpg

接種後12ヵ月頃に接種した側の腋窩リンパ節の腫大が1%くらいの頻度で見られますが、通常は放置しても6カ月までに自然消退します。
通常は手術や穿刺といった処置や抗結核薬の内服などは必要ありません。

 

化膿性リンパ節炎

画像10.jpg

画像11.jpg

画像12.jpg

腫大したリンパ節が化膿することがあります。化膿したリンパ節は皮膚に癒着し炎症が皮膚に及び、発赤が見られます。このような状態になるとやがてリンパ節は穿孔し、排膿します。この場合も清潔にするだけで通常自然治癒しますが、次の場合には抗結核薬の投与も考慮します。

  • 腫大したリンパ節のサイズが3cmを超える例や複数のリンパ節が腫大している例
  • 局所の炎症所見が強い例(皮膚表面の強い発赤、皮膚との癒着を認める、リンパ節が自壊)
  • リンパ節腫大が遷延あるいは増悪する例

 

皮膚結核様病変(結核疹、狼瘡など)

画像13.jpg

画像14.jpg

接種後1ヵ月前後から、接種部位を中心に全身に様々な形の皮疹が出現します。経過を観察するだけで1~2ヵ月で自然治癒します。

 

骨炎(骨髄炎・骨膜炎)

画像17.jpg

画像15.jpg

抗結核薬の投与などの適切な措置が必要になります。